株式会社ホーリーツリー代表
山中シゲノブです。
■【考察】『映画 えんとつ町のプペル』は何をもって成功と言えるのか?
『映画 えんとつ町のプペル』が12月25日に公開をされました。クリスマスケーキを購入する前にプペルを観覧してから家族でクリスマスを楽しもう!そんな光景が日本中で生まれる!と僕の中ではワクワクしていましたが、実はそこまでの「社会現象」にはならなかったな、、、と感じたのが正直な感想です。
今回は、公開されたばかりの『映画 えんとつ町のプペル』が、何をもって成功と言えるのか。
この辺りを書いていこうかと思います。
まずは、「鬼滅の刃」は今はどれくらいの興行収入と動員数を生み出してているのか?
見ていきましょう。
人気アニメ「鬼滅の刃」の劇場版「無限列車編」の興行収入(興収)が、「千と千尋の神隠し」(約317億円)を超え、ついに史上最高額なりました。28日正午にメディアが「興収約325億円」と報じると、ツイッターでは喜びの声と共に「次は400億円」という、気の早い声も飛び出すなど大きく盛り上がっています。
今回のポイントは「千と千尋」の累計興収を年内に捕らえたことです(しかも上方修正された数字を超えた)。そして、もう一つ言えば、「12月21日~27日」の週の興収が約13.1億円になったことも驚異的でした。前週(12月14日~20日)は約8.8億円でしたから何と約5割増になります。
■『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』興行成績の推移(公開日10月16日)
公開3日間:興行収入46億2311万7450円、動員数342万493人
公開10日間:興行収入107億5423万2550円、動員数798万3442人(前週比較+約61億円)
公開17日間:興行収入157億9936万5450円、動員数1189万1254人(前週比較+約50億円)
公開24日間:興行収入204億8361万1650円、動員数1537万3943人(前週比較+約47億円)
公開31日間:興行収入233億4929万1050円、動員数1750万5285人(前週比較+約29億円)
公開39日間:興行収入259億1704万3800円、動員数1939万7589人(前週比較+約26億円)
公開45日間:興行収入275億1243万8050円、動員数2053万2177人(前週比較+約16億円)
公開52日間:興行収入288億4887万5300円、動員数2152万5216人(前週比較+約13億円)
公開59日間:興行収入302億8930万7700円、動員数2253万9385人(前週比較+約14億円)
公開66日間:興行収入311億6664万7900円、動員数2317万5884人(前週比較+約9億円)
公開73日間:興行収入324億7889万5850円、動員数2404万9907人(前週比較+約13億円)
■歴代映画興行収入ランキング(興行通信社調べ)
1.『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(324.7億円)
2.『千と千尋の神隠し』(316.8億円)
3.『タイタニック』(262億円)
4.『アナと雪の女王』(255億円)
5.『君の名は。』(250.3億円)
6.『ハリーポッターと賢者の石』(203億円)
7.『ハウルの動く城』(196億円)
8.『もののけ姫』(193億円)
9.『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(173.5億円)
10.『ハリーポッターと秘密の部屋』(173億円)
12月27日現在で、、
興行収入324億7889万5850円
動員数2404万9907人
です。
で、、『映画 えんとつ町のプペル』に戻します。
まずは、何を持って成功と言えるかのラインを決める方がこれからの展開も面白く応援できるかと思います。
100億円が成功ラインの鍵
一部報道で書かれている通り(テレビにおける西野氏の発言を拾っても)、「興行収入100億円が一つの成功ライン」。
となると、、
興行収入100億円ラインは、1998年に101億円超の大ヒットを記録した『踊る大捜査線 THE MOVIE』程度と考えればいい。それなりに社会現象を巻き起こさないと、なかなか到達しない記録。
2015年に、大ヒット映画の続編として世に出てきた『ジュラシック・ワールド』は95億円を記録。『ジュラシック・ワールド』でさえ100億円には届かなかった。
いずれにしても100億円の興行収入をめざすなら、700万人ほどの観客を動員しなければならないと言われる。西野氏のオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」の登録者数は7万人超であるが、さすがにサロンメンバー個々の頑張りでは限界があるはず。
公開前から西野さんはありとあらゆる策を打ち続けています。それを見ると「現実を知らない応援者」の人たちは、シンプルにすごいなぁ、、、と感じるかもしれません。
でも、700万人の動員を実現させるには、
1万4200名を集めても、まだまだ長い道のりは続きます。
だって700万人がゴールだからね。
こちらのクラウドファンディングは、かなり珍しいケースでして、リターンを「講演会に参加できる権」の一個しか用意しなかったのですが、実は実は僕がこれまでに仕掛けたクラウドファンディングの中で最高支援額を叩いておりまして、「締め切りまで残り11時間」の時点で、支援者数が1万4205名、支援総額が7528万1200円となっております。
人は得てして、期待値を高くする傾向にあります。
しかし、世界的な成功者たちは期待値を絶対に高くしません。
なぜなら、人は「期待値を高くしすぎて失敗するよう」になっていることを知っているからです。
なぜ能力の低い人ほど自分を「過大評価」するのか
65名の大学生を対象に、30個のジョークを読ませ、どれほど面白かったかを評価してもらいました。この点数でユーモアの理解度がわかります。これと同時に「あなたのユーモアの理解度は同年代の中でどのくらいに位置していると思いますか」と訊きました。
調査の結果、ユーモア理解度の順位の低い人ほど自己評価の高い傾向があることがわかりました。
成績下位25%以内の人は、平均して「上位40%程度にいる」と自分を過大評価したのです。一方、成績上位25%以内の人は「上位30%程度にいる」と過小評価していました。
映画が爆発的にヒットする仕組みと流れ
『映画 えんとつ町のプペル』の内容については言及しない。ここではブランディングについて、簡単に解説していこう。
消費者が何らかの商材にお金を支払う場合、大きく分けて2つのベネフィットを手に入れたいと考える。
それが「機能的ベネフィット」と「情緒的ベネフィット」の2つだ。
映画でいえば、作品そのものが本当に素晴らしく、多くの人に魅力が伝わるようなものに仕上がっているのであれば「機能的ベネフィット」は高いと言えるだろう。
いっぽうで作品の内容はともかく、周りの多くの人が鑑賞している、観ないと時代に取り残されるかも、という感覚を覚える場合、「情緒的ベネフィット」が高いと言えるだろう。
『君の名は。』が大ヒットした際、ふだんはアニメ映画を観ない人でさえ映画館へ足を延ばした。そして想像していた以上に感動すれば、周りにも「絶対に観に行ったほうがいいよ」とお勧めすることになる。
「情緒的ベネフィット」が「機能的ベネフィット」に変容するとき、口コミで広がる「バイラルマーケティング」が大きく機能する。したがって、2つのベネフィットが組み合わさって、映画は大ヒットするものなのだ。
だからジブリやディズニーといった、すでに確立されたブランドの映画は強い。作品の内容を詳しく知らなくても「ジブリの映画だから観たい」「ディズニー映画は外せない」という雰囲気(情緒的ベネフィット)を市場につくり出せる。
だから公開前からプロモーションコストを使えるし、初動の動きがよければさらにコストを投入して、「今この映画を観ないと取り残される感」を煽るのだ。
空前のヒットを記録中の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』も、そのようなマーケティング活動をして大成功をおさめている。
しかし『映画 えんとつ町のプペル』はどうか。
西野さんには熱狂的なファン(信者)もいるが、反面アンチや成功を妬んでいる人も少なくない。
今回の流れで西野さんに乗っておけば、、、の人もいるかもしれない。
でも、頑なに「あいつは失敗すればいい」と考えている輩も少なくないはず。
今回は「プペル」より「西野さん」の映画という印象が強かったと感じる。
「商品より誰が売るか」がマーケティングでは大切な言葉ですが、こと映画においては「誰が」の部分がひょっとすると邪魔をしていたかもしれない。
「西野氏の映画だから観たい」という人がいるように、「西野氏の映画だから観たくない」という人もいるだろう。しかも、その割合はそれなりにいるようだ。
西野氏はビジネスのこと、とくにマーケティングのことについては熟知しており、数々の成功をおさめている。我々ビジネスパーソンも見習うべきことは、とても多い。
しかし、数百万人を動員する映画を成功に導くためには、ブランディング戦略は避けて通れない。にもかかわらず、今回の『映画 えんとつ町のプペル』のプロモーションプロセスにおいて、西野氏は前面に出すぎてしまってはいなかったか。そこが少し気になった。
まるで選挙中の政治家を見ているかのような、宣伝運動のように見えた。あそこまで露出しなくても、西野氏のファンは映画館に足を運んだだろう。大事なことは「アンチ西野」を刺激しないことだった。
強烈な「アンチ」の存在はあなどれない。もしも興行収入100億円が成功ラインとして考えるならば、プラスの要素に目を向けるだけでなく、マイナス要素への配慮も重要なのだ。
「えんとつ町のプペル」は社会現象になるのか?
僕は残念ながらそうはならないと思う。色んな意味で「できない」ようにされる気がします。
あとは、あまりにも「グループ化」しすぎて、、外からの人が入りにくい。
そんな現象を今は、気がつかずに作っているような気がする。
例えば、こんな感じです。
仲の良いグループだけでいくら流行らせてもそれは「グループ内」でしか盛り上がらないということ。
社会現象を起こすには、垣根を外した盛り上がりを「内からではなく外から」生み出していく必要が映画にはある。
でないと、、数万人のコミュニティで数億円の予算をかけて作成した「卒業課題」のように感じられるからです。
なので、いくらSNSで拡散されてもそれは、「国民全体」が興味を持っているのではなく、関係者、グループ内だけで恐ろしくもりあがっているだけ、、と感じてしまうからです。
まぁ、とはいえ公開してまだ数日ですから、これからどんな「偶然」の重なりで大ヒットするかはわかりません。
ケビンコスナーや、スピルバーグ監督がTwitterで、、
「プペル、、、あれ、すごいね!!!!」
こんな事が起きれば、一気に超上昇気流にのって「プペル」は駆け上がっていくはず。
ともあれ、大切なのは、、
▼山中シゲノブの最新のビジネスに関する記事(1記事=2000~3000文字)、
オンラン動画が視聴できるオンラインサロン(ほぼメルマガ)はコチラ